1970年の大阪万博を象徴するアイコンとして、今もなお愛される「太陽の塔」。その内部再生事業が完了し、内部公開が3月19日から始まった。塔内部全体が常時一般公開されるのは、大阪万博閉幕以来、48年ぶりのことだ。
再生事業では、コンクリートの厚みを増すなどの耐震補強のほか、塔全体の軽量化をはかるためエスカレーターを撤去し、階段を設置。70年の開催当時は塔内をエスカレーターで上りながら「生命の進化」をたどったが、自分のペースで上れる階段を使うことで、30分の見学時間内で興味のあるポイントを様々な角度からじっくり見られるようになる。高齢者や障がい者ほか階段の利用が困難な人向けに、エレベーターも整備された。
新生・太陽の塔は二つのゾーンで構成される。エントランスを抜けるとまずは「地底の太陽ゾーン」へ。その中心は巨大オブジェ「地底の太陽」だ。太陽の塔のお腹部分についている「太陽の顔」、頂部の「黄金の顔」、背面の「黒い太陽」と並ぶ、太陽の塔「第4の顔」といわれた巨大な仮面だが、万博閉幕後、行方不明に。当時の展示風景や制作風景の写真などをもとに復元され、高さ約3㍍、全長約11㍍のサイズでよみがえった。映像や照明などを組み合わせて、万博当時、太陽の塔の前段に位置していた地下展示「過去:根源の世界」の雰囲気を、今ふたたび伝える。
「生命の樹」ゾーンでは、地下から上へと伸びる「生命の樹」がそびえる。当時からの高さは約41㍍。1本の樹体に、アメーバなどの単細胞生物から恐竜、クロマニョン人まで、生物の進化をたどる33種類の生き物がびっしりとはりつく、独創的なインスタレーションだ。万博当時と同じBGM「生命の讃歌」がゾーンを包んでいる。
内部公開にあわせ、生き物たちのほとんどが修復あるいは新規制作された。全183体のうち、表面を塗装し直すなど修復されたのはプテラノドンやオーム貝など29体。新規に制作されたのは153体。その中でもゴリラ1体のみがあえて修復されず、頭部が脱落するなど経年劣化の状態で残っている。「生命の樹」がたどった約半世紀という時間の厚みをとどめるためという意図からだ。20体ある三葉虫それぞれに個性があったり、オルトセラスペルキドウム(イカのような生物)の模様が一体ずつ異なっていたり、ディテールも豊かだ。階段を上りながら生物の進化をたどる「時間旅行体験」が、48年ぶりによみがえる。
入館は予約制。ホームページhttp://taiyounotou-expo70.jp/(太陽の塔オフィシャルサイト)で4カ月先まで予約可能(先着順)。入館日と入館時間帯(1枠あたり30分)を予約する。入場料は高校生以上700円、小中学生300円。館内の写真撮影は不可。